

ストローで水をぶくぶくするだけの訓練が、実は誤嚥を引き起こすことがあります。
ブローイング訓練とは、ストローや笛などを使って息を吹き出す動作を繰り返す口腔リハビリの一手法です。 吹く動作(口腔気流)によって鼻咽腔が反射的に閉鎖されることを利用し、鼻咽腔閉鎖に関わる神経・筋群の機能を改善させることを主な目的としています。 嚥下障害のある患者が食事中に食べ物や液体が鼻に逆流してしまう場合、この訓練が特に有効です。
関連)https://www.st-medica.com/2012/02/blog-post_5302.html
また、ソフトブローイング(息をやわらかく吐き出す方法)は気管内圧を上昇させ、気道の虚脱を防ぐ効果や呼気持続時間を延長させる効果が期待できます。 これは「口すぼめ呼吸」と同様の効果であり、呼吸機能そのものの改善にもつながります。つまり、呼吸と嚥下の両面に働きかける訓練ということです。
関連)https://www.st-medica.com/2012/02/blog-post_5302.html
歯科医療現場での間接嚥下訓練として位置づけられており、言語聴覚士だけでなく歯科医・歯科衛生士も指導できる場面が増えています。 訪問診療の現場では患者自身が自宅で継続できる自主訓練としても処方されており、日常的に取り組みやすい点が現場スタッフから評価されています。これは使えそうですね。
関連)https://www.dental-career.jp/column/ginou-shikaku/column-81/
粘性度の調整という観点では、市販のとろみ剤を使うことで段階的に難易度を上げていくプログラムが組めます。コップの水に少量加えるだけで粘性を変えられるため、在宅患者への指示もシンプルです。患者の現状の口輪筋機能に合わせて「まず水で開始→徐々にとろみを加える」という流れで計画するのが効果的です。
研究から得られているエビデンスとして、1日10回×2セットを3か月間継続することで、口輪筋の引っ張り強さが有意に向上したという報告があります。 これは3か月で積み重なる刺激量の問題であり、週1回の指導だけでは成果が出にくいことを示しています。「月1回の訪問時に指導するだけでよい」という考え方は、現場では通用しないと理解しておくことが重要です。
関連)http://www5f.biglobe.ne.jp/~asada-shika/images/2020_1013.pdf
別の研究では、呼気筋への負荷訓練を1日5呼吸×5セットで毎日継続することで嚥下関連筋群への繰り返し刺激が増大し、持久力の獲得につながったとも報告されています。 「回数は多ければ多いほどいい」と誤解されがちですが、過度に行うと過呼吸を招く危険があるため上限の目安の設定も必要です。 回数の管理が条件です。
関連)https://www.kango-roo.com/mv/180/
ブローイング訓練には見落とされがちな落とし穴があります。ストローで水を吹くうちに、うっかり口から息を吸い込んでしまい水を誤嚥するケースが報告されています。 特に認知症患者や指示理解が不十分な患者では「吹く」と「吸う」の区別が曖昧になりやすく、リスクが高まります。誤嚥リスクが高い場合には水なし法への切り替えが必要です。
関連)https://www.dental-career.jp/column/ginou-shikaku/column-81/
安全な代替法として、ストローを空中にくわえて吹くだけの「エア法」や、垂らしたティッシュ・ガーゼに息を吹きかける方法があります。 これらでも鼻から息を吸い口から吐く練習は十分に成立するため、嚥下機能への刺激は保たれます。
関連)https://houmonshika.net/oralcare/837/
歯科衛生士が在宅訪問時に患者へ訓練を指導する際は、初回に必ず「吹く方向」「過呼吸の兆候(めまい・しびれ)」の2点を確認することが推奨されます。 万が一過呼吸の症状が出た場合は訓練を即中止し、ゆっくりとした深呼吸に切り替えるよう患者と家族の両方に事前説明しておくと安心です。これが安全管理の基本です。
関連)https://www.kango-roo.com/mv/180/
参考:ブローイング訓練の実施手順・注意事項(看護roo!)
https://www.kango-roo.com/mv/180/
ブローイング訓練は万能ではありません。鼻腔逆流があるからといって即座に「鼻咽腔閉鎖機能不全」と判断してブローイング訓練を開始するのは危険です。 鼻咽頭逆流は下咽頭の圧の影響(食道入口部の開大不全など)でも起こるため、原因が鼻咽腔にあるのか、それとも食道側にあるのかを内視鏡等で確認してから訓練方針を決めるべきとされています。 つまり、症状だけで訓練を即決めるのはNGです。
関連)https://www.st-medica.com/2012/02/blog-post_5302.html
歯科現場で独自に見落とされやすいのが「口腔内乾燥との組み合わせ問題」です。シェーグレン症候群や服薬(抗コリン薬・利尿剤など)による口腔乾燥患者は、口輪筋の動きが制限されやすく、ブローイング時に十分な口腔気流が生まれにくいケースがあります。唾液分泌量が少ないと口唇シールが不十分になるためです。このような患者には訓練前に人工唾液や保湿ジェルを使い口腔内環境を整える一手間が、訓練効果を大きく左右します。
また、ブローイング訓練は間接訓練(食物を用いない訓練)に分類されますが、直接訓練(実際の食事)と組み合わせることで相乗効果が期待できます。 間接訓練だけで嚥下機能の改善を目指すには限界があり、安全が確認できた段階で食事形態の調整と並行して進めるのが理想的です。歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士との連携が条件です。
参考:摂食嚥下訓練法のまとめ(日本摂食嚥下リハビリテーション学会)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/18-1-p55-89.pdf
参考:ブローイング時の粘性度とストロー径の筋活動への影響(J-STAGE)
| 職種 | 役割 |
|---|---|
| 🦷 歯科医師 | 嚥下訓練の指示・適応判断 |
| 🪥 歯科衛生士 | 口腔ケア・食前準備体操の補助・指導 |
| 🗣️ 言語聴覚士 | メンデルソン手技の評価・直接指導 |
| 🏥 管理栄養士 | 食形態の選定・栄養管理との統合 |
| ケース | 訪衛指(医療保険) | 口腔衛生管理加算(介護保険) |
|---|---|---|
| 月2回以内の訪衛指 | 算定可 | 算定可(両立) |
| 月3回以上の訪衛指 | 算定可 | 算定不可 |
| 同日実施(月2回) | 算定可 | 算定可 |