

あなたが自然光だと思って行ったシェードテイキング、実は窓からの「南向きの光」では色が1段階ずれてクレームの原因になることがあります。
歯科における色調選択(シェードテイキング)は、補綴物の仕上がりを左右する最重要工程のひとつです。使用するシェードガイドの種類によって、選択のアプローチが大きく変わります。
現在、歯科臨床で主流となっているのはVITAクラシカルとVITA 3Dマスターの2種類です。 VITAクラシカルは1956年から変わらない16色体系で、A(赤みがかった茶系)・B(黄みがかった茶系)・C(グレー系)・D(ピンク系)の4系統に分類されています。 一方のVITA 3Dマスターは、明度・彩度・色相の3軸で歯の色を体系的に分類するシステムで、前歯審美や自費症例での高い再現性が特長です。
関連)https://edogawanavi.jp/shop/103392/news/detail/40099/
使い分けの目安はこうなります。
つまり、症例の種類でガイドを使い分けることが基本です。
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参考:VITA 3Dマスターを使ったシェードテイキングの手順についての詳細解説
シェードテイキングでもっとも見落とされやすいのが光源の条件です。これが不適切だと、どんなに精密な判断力があっても色が正確に取れません。
理想的な条件は「曇天の午前11時〜午後14時、北側窓からの自然光」とされています。 北側の光は直射日光が当たらず、演色性が安定しているためです。南向きの窓や晴天時の直射日光は光の色温度が変化しやすく、同じ歯でも見え方が変わってしまいます。
関連)https://www.dl-asai.co.jp/pdf/nihonsigi.pdf
診療ライトで照らしたまま色調確認をすることも問題です。 歯科ユニットのライトには白色LEDや昼白色蛍光灯など様々な種類があり、それぞれ演色性が異なります。照射角によっては歯面に影が生じ、明度の判定が1〜2段階ずれることも珍しくありません。厳しいところですね。
関連)https://tokyo-doctors.com/webdoctor/6911
さらに、夜間の診療での色調確認は特に注意が必要です。 自然光がない環境では、いかに高性能なシェードガイドを使っても正確な比色は困難です。夜に行ったシェードテイキングを翌日確認したら全く異なる色に見えた、というケースは実臨床で頻発しています。
関連)https://higuchidc.com/p6/p638shade-taking
| 光源の種類 | 演色性 | 推奨度 |
|---|---|---|
| 北側窓・曇天の自然光(11〜14時) | ◎ 最も安定 | ✅ 推奨 |
| 南側窓の自然光・晴天 | △ 時間で変化 | ⚠️ 注意 |
| 歯科ユニットライト | △〜× 演色性に差 | ⚠️ 補助のみ |
| 夜間の室内照明 | × 不安定 | ❌ 非推奨 |
色調選択の精度を上げたい場合は、標準光源ランプ(CIE標準光源D65対応)を活用するという選択肢もあります。診療室の環境整備として、北側の窓に近い場所を色調確認専用のスペースとして確保している歯科医院も増えています。これは使えそうです。
「歯全体を一色で選べばいい」という考え方は、天然歯の複雑な構造を無視した危険な思い込みです。この理解が甘いと、技工物が完成してから「どこか違和感がある」という患者クレームにつながります。
天然歯は部位によって色が異なります。 口腔内の解剖的な色分布のポイントをまとめると:
関連)https://www.oralstudio.net/dictionary/detail/3122
これが基本です。 シェード選択の際は歯牙中央から歯頸部寄りの部分の色を最優先に確認し、切縁の色は補助的な情報として扱います。内部の象牙質の色の判別が最重要です。
関連)https://okumurashiken.jp/sugg
参考:天然歯の色の複雑性と審美修復における色調再現の解説
2024年度(令和6年度)の診療報酬改定で、「歯科技工士連携加算」が新設されました。 これは、補綴物の製作において歯科医師と歯科技工士が連携してシェードテイキングや色調採得を行った際に算定できる加算です。
関連)https://www.dentwave.com/column_20241212_dw
加算の算定要件には具体的に「色調採得(シェードテイク)を歯科医師と歯科技工士が共同で行うこと」が含まれています。 連携加算には以下の2種類があります:
関連)https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001663604.pdf
ICTを活用した連携の方が点数が高いのは意外ですね。 この背景には、デジタルカメラやカラーコミュニケーションフォームを活用した精密な情報伝達が、補綴物の再製作率を下げるという実績があります。
連携記録として最低限残しておくべき情報は以下の通りです。
この記録が不十分だと、審査で加算が認められないリスクがあります。記録の徹底が条件です。
参考:歯科技工士連携加算の詳細な算定要件と実務上の注意点
【R6年度診療報酬改定】歯科技工士連携加算と光学印象歯科技工士連携加算 - Dentwave
よくある失敗パターンと対策を整理します。
| 失敗パターン | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 補綴物が白すぎる | 乾燥した歯で確認・夜間確認 | 湿潤状態・自然光で再確認 |
| 技工物と色が合わない | 写真なし・口頭指示のみ | カラーコミュニケーションフォーム使用 |
| 術者によって結果が違う | VITAクラシカルのみ使用 | VITA 3Dマスターへ切替 |
| 患者クレームにつながる | 患者への確認なし | 患者立会いでのシェードテイク |
患者立会いのシェードテイキングは特に重要です。 患者自身が色を確認したうえで合意を得ておくことで、「思っていた色と違う」というクレームを事前に防ぐことができます。同意書的な意味合いも含めて、患者確認のプロセスをフローに組み込んでいる医院が増えています。
関連)https://higuchidc.com/p6/p638shade-taking
また、シェードガイド自体の劣化も見落とされがちなポイントです。シェードガイドのタブは使用・清拭を繰り返すことで経年変色します。定期的に新品と比較し、色が変わっていると感じたら交換するのが原則です。これだけ覚えておけばOKです。
デジタルシェードメーターの導入も選択肢として検討する価値があります。色彩計を使った客観的な測定は、術者の経験値に依存しない安定したシェードテイキングを実現します。費用はかかりますが、自費審美症例の多い歯科医院では投資対効果が高い機器のひとつです。
参考:シェードテイキングの基礎と失敗を防ぐための注意点