

喫煙しない患者でも、受動喫煙だけで子どもの歯肉にメラニン色素が沈着することがあります。
関連)https://www.jdha.or.jp/pdf/health/hatookuchi_20250611_1.pdf
歯肉のメラニン色素沈着とは、口腔粘膜内に存在するメラノサイト(メラニン形成細胞)が何らかの刺激を受けて活性化し、メラニン色素を過剰に産生・沈着させる状態のことです。 皮膚の日焼けとメカニズムは同一で、「紫外線→皮膚の黒化」と同様に、「喫煙やその他の刺激→口腔粘膜の黒化」として起こります。
関連)https://yamamoto8.com/melanin/melanin.htm
外見上は前歯部歯肉や下唇に茶褐色〜黒褐色の平坦な色素斑として現れます。 痛みや腫れを伴わないことが多いため、患者本人も長期間気づかないケースがほとんどです。
関連)http://www.jsop.or.jp/atlas/oral-mucosal-lesions/melanin-pigmentation/
つまり「症状ではあるが疾患ではない」ということですね。
ただし、口腔粘膜にメラニン色素沈着を来す背景には、Addison病・Peutz-Jeghers症候群・McCune-Albright症候群・神経線維腫症I型(von Recklinghausen病)など、生命に関わる全身疾患が隠れている場合があります。 歯科従事者として単なる「見た目の問題」で終わらせず、全身的な背景を念頭においた鑑別を行うことが非常に重要です。これは見落とせませんね。
関連)http://www.jsop.or.jp/atlas/oral-mucosal-lesions/melanin-pigmentation/
歯科従事者が押さえておくべきメラニン色素沈着の原因は、喫煙だけではありません。以下の通り多岐にわたります。
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関連)https://www.jdha.or.jp/pdf/health/hatookuchi_20250611_1.pdf
関連)https://keiyoukai.jp/wp/?p=5073
歯周病との関係も見逃せません。歯肉炎が進行して歯周炎になると、歯肉の炎症が慢性化し、毛細血管の血流障害が起きることで歯肉が赤紫〜黒紫色に変化します。 これはメラニン色素沈着と混同されやすいため、鑑別に注意が必要です。
| 原因 | 主に影響する部位 | 特徴 |
|---|---|---|
| 喫煙 | 前歯部歯肉全体 | 左右対称に広がることが多い |
| 受動喫煙 | 小児の歯肉 | 本人が非喫煙者でも生じる |
| 口呼吸 | 前歯部唇側歯肉 | 乾燥部位に集中する |
| メタルタトゥー | 修復物周囲の歯肉 | 自然回復しない点で注意 |
| 全身疾患 | 口腔粘膜全体〜口唇 | 多部位・びまん性に生じる |
歯肉の黒ずみを「生理的なもの」「喫煙によるもの」と即断するのは危険です。鑑別を要する疾患を正確に理解しておくことが、歯科従事者としての重要な責務になります。
Addison病(慢性副腎皮質機能不全)では、皮膚および口腔粘膜に広範な色素沈着が生じます。 口腔内では歯肉・口唇・頬粘膜・口蓋などに多部位性のびまん性色素沈着として現れます。全身疲労感、体重減少、低血圧などの症状が同時に見られる場合は、内科への紹介が必要です。これは専門的な判断が必要ですね。
関連)https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/ha/shikiso/
Peutz-Jeghers症候群は、口唇・口腔粘膜・指趾先端部に多発する黒色の色素斑と、消化管ポリポーシスを特徴とする遺伝性疾患です。 口唇周囲の多発性斑点に気づいたら、この症候群を念頭に置き、消化器内科との連携が求められます。
関連)http://www.jsop.or.jp/atlas/oral-mucosal-lesions/melanin-pigmentation/
メタルタトゥーは、銀合金などの歯科用金属がイオン化して歯肉に沈着したものです。 「自然に回復することはない」という点が重要で、除去するにはレーザー治療や外科的切除が必要です。患者への説明で「治療しても根本の金属がある限り再発する」と正確に伝えましょう。
症状としての生理的メラニン色素沈着には、処置の必要はありません。 しかし審美的に患者が気にする場合、または患者へのモチベーション向上のために治療を提案することは有効です。主な治療法は3つです。
関連)https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/ha/shikiso/
① レーザー治療(Er:YAGレーザー・Nd:YAGレーザー)
レーザーを用いて色素が沈着した歯肉の上皮を蒸散させ、新しい上皮の再生を促す方法です。 術後の疼痛が少なく、出血も少ないため、現在最も多く選択される治療法です。費用の相場は以下の通りです。
関連)http://www.tsutsumihiroyuki-dc.jp/white/melanin.html
関連)https://ginzadental.or.jp/fee/laser.html
再照射が必要な場合は初回の半額程度に設定している医院が多く、患者への費用説明は初診時に丁寧に行う必要があります。
② フェノールアルコール法(ガムピーリング)
フェノールを色素沈着部分に塗布し、アルコールで中和・漂白する方法です。 費用は上下顎で22,000円程度から設定されているケースが多く、レーザーが導入されていないクリニックでも実施可能な点がメリットです。 ただし、フェノールの刺激により術後にヒリヒリ感が生じることがあります。
関連)https://hirano-shinbi.com/needs05/
③ 切除術
色素沈着部分を外科的に切除する方法です。 深部まで色素が及んでいる場合やレーザー・ピーリングで対応が難しい症例に用いられます。侵襲性が高いため、現在では他の方法が選択できない場合の選択肢となっています。
関連)https://yamamoto8.com/melanin/melanin.htm
これらの治療はすべて自費診療です。
関連)http://www.kosesika.or.jp/guide1
参考情報(審美歯科レーザー費用について詳しく記載)。
銀座歯科 歯科用レーザーの費用・料金について
参考情報(フェノールアルコール法の手順と実際の症例について)。
サカモト歯科医院 歯肉メラニン色素沈着の治療法まとめ
治療を行っても、根本原因が残っていれば再発は避けられません。再発予防こそが治療の最重要ステップです。
特に喫煙が原因の場合、禁煙後3〜5年で約半数の患者においてメラノーシスが自然消失したとの報告があります。 これは患者に禁煙を勧める強力なエビデンスになります。逆に喫煙を継続すれば、どれだけ丁寧な治療を行っても必ず再発するということですね。
関連)https://uehonmachi-plaza-dc.jp/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E/2401
歯科衛生士が患者指導で伝えるべきポイントは以下の通りです。
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関連)https://keiyoukai.jp/wp/?p=5073
再発した場合の費用については、術後1年以内であれば50%オフで対応している医院もあります。 患者への初回説明時に「再発の可能性があること」と「再発した場合の費用目安」を同時に案内することで、クレームを防止できます。これは実務上の大切なポイントです。
関連)https://www.nomura-dental-net.jp/melanin.html
歯科衛生士が定期検診時にメラニン色素沈着の状態を継続的に記録・モニタリングすることも、再発を早期に発見し追加治療のタイミングを逃さない上で重要です。口腔写真による定点観測をルーティン化することをお勧めします。
参考情報(禁煙後のメラノーシス消失に関する詳細な記述)。
上本町プラザ歯科 禁煙後のメラノーシス消失と患者指導について
参考情報(日本口腔外科学会による生理的色素沈着の解説)。
日本口腔外科学会 口腔粘膜のメラニン色素沈着と処置の必要性について