

ブローイング訓練を続けても、実は発話以外の嚥下改善には効果がないと報告されています。
関連)https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/kokushi/drill/1752/
軟口蓋は口腔と鼻腔を仕切る可動性の仕切り板です。 嚥下・発声のたびに後上方へ持ち上がり、咽頭後壁に接触することで「鼻咽腔閉鎖」が成立します。 この閉鎖が不完全な状態を鼻咽腔閉鎖不全症(口蓋帆咽頭閉鎖不全症)と呼び、脳卒中・外傷性頭部障害・口蓋裂などが主な原因です。
軟口蓋の挙上運動には主に口蓋帆挙筋・口蓋舌筋・口蓋咽頭筋の3筋が協調的に関与しています。 挙上高さの調整もこれら3筋の協調収縮によって行われるため、どの筋が障害されているかを評価したうえで訓練を設計するのが原則です。
軟口蓋挙上訓練の目的は大きく以下の3点に整理されます。
関連)https://www.enjoyeatlife.com/post/%E9%BC%BB%E5%92%BD%E8%85%94%E9%96%89%E9%8E%96%E8%A8%93%E7%B7%B4
これが基本です。
代表的な訓練方法は以下の4種類です。選択を誤ると「訓練しているのに改善しない」という状況に直結します。
| 訓練法 | 主な目的 | 対象 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ブローイング訓練 | 鼻咽腔閉鎖に関わる神経・筋群の活性化 | 開鼻声・構音の歪み | 発話機能への効果が主体。嚥下機能改善のエビデンスは限定的 co-medical.mynavi(https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/kokushi/drill/1752/) |
| プッシング・プリング法 | 反射的な息堪えを利用した軟口蓋挙上促進 | 嚥下時の閉鎖不全 | 椅子を持ち上げる動作など上肢への力入れが困難な患者には適用しにくい |
| 寒冷刺激法 | 軟口蓋反射の誘発 | 感覚低下・不随意的な挙上が困難な例 | 凍らせた綿棒で軟口蓋に冷刺激・圧刺激・微振動刺激を加える enjoyeatlife(https://www.enjoyeatlife.com/post/%E9%BC%BB%E5%92%BD%E8%85%94%E9%96%89%E9%8E%96%E8%A8%93%E7%B7%B4) |
| PLP(軟口蓋挙上装置)装着下訓練 | 他動的な挙上位の固定+機能賦活 | 中等度以上の運動障害 | 歯科医師による装置作製が必須 jda.or(https://www.jda.or.jp/park/relation/language_04.html) |
つまり、訓練法の選択が訓練の成否を決めます。
ブローイング訓練の注意点を特に強調します。この方法はもともと発話(構音)の鼻咽腔閉鎖改善を目的として開発された経緯があり、嚥下動作への汎化効果は限定的という報告があります。 歯科現場で安易に「とりあえずブローイング」と指導するのは再考が必要です。
関連)https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/kokushi/drill/1752/
参考:ブローイング訓練の目的と限界についての解説動画
【超簡単】ブローイング訓練について分かりやすく解説します。【KAMEKICHI/言語聴覚士】
PLP(Palatal Lift Prosthesis:軟口蓋挙上装置)は義歯に類似した口腔内装置で、後方の延長部が軟口蓋を機械的に挙上させます。 歯科医師にとって「ただ装置を作れば良い」という認識は危険です。
関連)https://shinbashishika.com/blog/oral-hypofunction-rehab/
これは意外ですね。
参考:PLP治療についての詳細(広島口唇裂口蓋裂研究会)
鼻咽腔閉鎖不全治療その1 – 広島口唇裂口蓋裂研究会
一般的な訓練は「呼気」を使う方法(ブローイング・ストロー吹き)が主流です。 しかし最新の研究では「吸気」のほうが軟口蓋を高く・確実に挙上させる可能性が示されています。
関連)https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20K19440
科学研究費補助金(KAKENHI: 20K19440)の研究によると、「強く吸う」動作は他のタスクに比べ軟口蓋が最も高く挙上し、咽頭後壁にも確実に接触することがMRIで裏付けられました。 鼻咽腔閉鎖機能は呼気よりも吸気と関係があるという生理学的知見は、従来の訓練パラダイムを見直す根拠になります。
関連)https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20K19440
実際に鼻咽腔閉鎖不全患者に吸気訓練を施行したところ、いずれの症例でも改善が見られたと報告されています。 歯科・STが連携する際に、このアプローチを訓練メニューの一つとして検討する価値は十分にあります。
関連)https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20K19440
参考:吸気を用いた鼻咽腔閉鎖機能訓練の研究(科研費)
吸気に着眼した新たな鼻咽腔閉鎖機能の訓練方法の検討 – KAKEN
訓練は「吹く」だけではありません。
連携の基本フローは次の通りです。
1. 🔍 評価フェーズ(歯科・医師・ST):ファイバースコープや嚥下造影(VF)・嚥下内視鏡(VE)で鼻咽腔閉鎖不全の程度・部位・原因を確認
関連)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-%E8%80%B3%E9%BC%BB%E5%92%BD%E5%96%89%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%8F%A3%E8%85%94%E5%92%BD%E9%A0%AD%E7%96%BE%E6%82%A3/%E9%BC%BB%E5%92%BD%E8%85%94%E9%96%89%E9%8E%96%E6%A9%9F%E8%83%BD%E4%B8%8D%E5%85%A8
2. 🦷 装置作製(歯科医師):PLP・スピーチエイド・軟口蓋栓塞子の中から適切な装置を選択・作製
関連)https://www.jda.or.jp/park/relation/language_04.html
3. 🗣️ 訓練実施(ST+患者):装置装着下での構音訓練・ブローイング訓練・吸気訓練などを段階的に実施
歯科が担う「装置作製」は構音・嚥下リハ全体の基盤です。 装置の適合精度が1mm違うだけで訓練効果は大きく変わるため、STからのフィードバックを装置調整に反映させるサイクルが不可欠です。
また、非経口摂取(経管栄養)が長期化している患者では軟口蓋の廃用性萎縮が進み、挙上に必要な筋力が失われるリスクがあります。 経口摂取の再開を目指す前段階として、早期から軟口蓋ストレッチや間接訓練(感覚刺激・他動的挙上)を開始することが廃用予防の観点から重要です。
参考:非経口摂取患者の軟口蓋ストレッチの必要性
非経口摂取で経過した場合,どうして軟口蓋のストレッチが必要か – 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
廃用に注意が必要です。
参考:摂食嚥下リハビリ全体像(栃木県歯科医師会マニュアル)
摂食嚥下指導マニュアル – 栃木県歯科医師会
参考:間接訓練11種の解説(デンスタ)