

文書様式3は「参考様式」であり、その通りに記載しなくても算定できます。
文書様式3は、公益社団法人日本歯科医師会が定めた「口腔衛生管理」に関する情報提供文書の参考様式です。 歯科衛生実地指導料(初回算定時)や訪問歯科衛生指導算定時に患者・利用者へ渡す文書として使用されており、歯科医師の指示内容の要点、口腔に関する問題点、指導内容の記録といった項目で構成されています。
関連)https://www.jdha.or.jp/word/contents/info/kaigo_housyu_3_kaigo.docx
重要なのは「参考様式」という点です。つまり法的に「この用紙でなければならない」という縛りはありません。 必要な記載項目をすべて網羅した独自書式でも算定は可能ですが、項目の漏れがあると個別指導で算定根拠なしと判定されるリスクがあります。
関連)https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/news/000258981.pdf
具体的に様式3に記載される内容は以下の通りです。
この一覧を見ると分かるように、「単に文書を渡す」だけでなく、利用者の状態と指導内容の両方を記録する複合的な書類です。 様式を熟知せずに作成すると記載漏れが発生しやすく、結果として算定が認められないケースも起こります。記載は丁寧に、です。
関連)https://www.jdha.or.jp/word/contents/info/kaigo_housyu_3_kaigo.docx
記載必須の項目を正確に理解しておくことで、算定漏れを防げます。 特に見落としが多いのが「歯科医師からの指示内容の要点」欄です。歯科衛生士が独断で動いているのではなく、歯科医師の指示に基づいて実施しているという記録が算定根拠の根幹を成します。
加えて、介護職員への技術的助言・指導の内容も記録が必要です。 「□ 歯みがきの方法」「□ 義歯清掃の方法」といったチェック欄が用意されていますが、チェックのみでは不十分な場合があります。具体的にどのような指導を行ったのか、補記する習慣を持つことが大切です。
関連)https://www.jdha.or.jp/word/contents/info/kaigo_housyu_3_kaigo.docx
実際の記載で参考になるポイントを整理します。
| 記載項目 | よくある漏れ | 対策 |
|---|---|---|
| 指示医師名 | 氏名の記載忘れ | 事前に様式へ印刷・スタンプ |
| 問題点チェック | 該当なしでもチェックなし | 全項目を確認してから記載 |
| 指導時間 | 開始・終了時刻の未記載 | 訪問前にメモシートを準備 |
| 介護職員への助言内容 | チェックのみで補記なし | 口頭で伝えた内容を一行でも追記 |
| 記入日・記入者 | 後日まとめ記入で日付が曖昧 | 当日記入を原則とする |
これだけ押さえれば大丈夫です。
文書様式3は、介護保険サービスにおける「口腔衛生管理加算」の算定根拠書類として機能します。 口腔衛生管理加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)の2区分があり、(Ⅰ)は月90単位、(Ⅱ)は月110単位です。 加算区分の選択は施設側の判断ですが、記録の充実度が重要な評価ポイントになります。
関連)https://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/05/acf7e0c80daf531099f54086ed75fe68.pdf
同一月内に訪問歯科衛生指導料が3回以上算定された場合は、口腔衛生管理加算を算定できません。 これは意外と知られていないルールです。訪問頻度が多い月には注意が必要ですね。
関連)https://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/05/acf7e0c80daf531099f54086ed75fe68.pdf
さらに令和6年度の介護報酬改定では施設における口腔衛生管理の義務化が進み、「口腔衛生管理体制計画書(別紙様式6-1、6-2)」の作成も求められるようになりました。 文書様式3はその計画に基づく実施記録として位置づけられており、書類体系の全体像を把握しておくことが必要です。
算定時のチェックリストとして以下を活用してください。
整合性の確認が条件です。
文書様式3の使用場面は1つではありません。 主な使用ケースは以下の2つです。
1. 歯科衛生実地指導(外来):初回算定時に提供する書類として文書様式3を使用。プラークチャートを歯式図に記入し、口腔内状況の説明と指導内容を記載します。
2. 訪問歯科衛生指導(在宅・施設):初回および再指導時に提供する書類として使用。プラークチャートの提供は算定上必須ではありませんが、口腔内状況を把握した記録として活用できます。
外来での実地指導では、プラークの付着状況を歯式図に記入したうえで、患者自身によるブラッシングを観察しながらプラーク除去方法を指導することが求められます。 指導は観察しながら行う点がポイントです。
一方、在宅患者への訪問指導では「歯科医師の指示に基づく」という要件が特に強調されます。 文書様式3の記載欄外に「歯科医師の指示によるもの」と明記するか、指示内容欄にしっかり記載することで、不適切算定の疑いを回避できます。
参考リンク:日本歯科医師会が公開している情報提供用文書の記載例と活用法(歯科衛生実地指導料および訪問歯科衛生指導の算定文書の書き方解説)
日本歯科医師会|情報提供用文書の記載例と文書の活用方法(PDF)
また、介護給付費分科会の様式として公開されている「別紙様式3 口腔衛生管理に関する実施記録」の最新版は日本歯科衛生士会のサイトで確認できます。
日本歯科衛生士会|口腔衛生管理に関する実施記録(別紙様式3)ダウンロード
文書様式3には、実は1枚の書類を複数の用途に兼用できる活用法があります。 これを知っているだけで書類作成の手間が大幅に減ります。
文書様式3の歯式図は、プラークチャートとしても使えます。 混合歯列期歯周病検査ではプラークチャートが必要ですが、文書様式3の歯式図にプロービング時の出血有無を書き込むことで、検査記録と指導記録を1枚にまとめられます。患者への説明もスムーズになり、記録の分散が防げます。
活用法2:補綴物装着時の指導記録と兼用する
新製有床義歯管理料やクラウン・ブリッジ維持管理料の算定に合わせて歯科衛生実地指導を行う場合、文書様式3に補綴物に関する記載を追記することで1種類の文書で対応できます。 義歯の着脱方法や義歯洗浄剤の使い方といった具体的な指導内容を様式3の余白に記入するのが実践的です。
活用法3:診療録への添付で記載を簡略化する
文書様式3を診療録に複写して添付することで、診療録への記載内容を大幅に省略できます。 法令上も文書の添付は記録として認められており、記載の二重化を防ぐ効果があります。
これは使えそうです。
特に訪問件数が多い歯科衛生士にとって、書類作成の効率化は直接的に時間の節約につながります。1件の訪問記録に10分かかるとして、月20件なら200分の削減効果が見込めます。書類管理の効率化ツールとして、訪問歯科専用の記録管理アプリやクラウド型介護記録システムの導入を検討する価値もあります。導入時には各システムが文書様式3に準拠したフォーマットを持っているか確認することが選定の条件です。
参考リンク:介護保険における口腔衛生管理加算の詳細と別紙様式3の参考解説
公益財団法人長寿科学振興財団|口腔衛生管理加算の改定内容と様式3の位置づけ(PDF)
保険診療の個別指導において、歯科の指摘事項として最も多いのは「診療録や関係書類の記載不備」です。 文書様式3もその対象であり、算定根拠となる記録として厳しく確認されます。
関連)https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/news/000258981.pdf
実際に指摘されやすいポイントを以下に整理します。
| 指摘されやすい不備 | 具体的な問題 |
|---|---|
| 指示医師の氏名が未記載 | 「歯科医師の指示」の証明ができない |
| 記入日が訪問日と一致しない | 後日まとめ記入の疑いが生じる |
| 指導内容がチェックのみ | 何を具体的に指導したか不明 |
| 訪問回数の記載なし | 算定回数との照合ができない |
| 利用者署名・確認がない | 文書を実際に提供した証拠が弱い |
厳しいところですね。
関連)https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/news/000258981.pdf
指導対策として有効なのは、「記載した内容と実際の診療内容の一致」を常に意識することです。 画一的な記載ではなく、個々の利用者の状態や指導内容の変化を反映した記録が求められます。「前回と同じ内容」が続く場合でも、「変化なし・前回同様」と明記するだけで記録の継続性が担保されます。
関連)https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/news/000258981.pdf
参考リンク:地方厚生局が公開する保険診療と個別指導(歯科)解説資料。記載すべき事項と添付書類について詳述されています。
地方厚生局(東北)|保険診療と個別指導(歯科)第5回(PDF)
口腔衛生管理加算の記録管理を運用レベルで整えるには、施設ごとに「記録チェックシート」を作成し、毎月のサービス実施後に担当歯科衛生士がセルフチェックする仕組みが有効です。チェック項目は文書様式3の必須記載項目をそのままリスト化するだけで構いません。記録のクオリティを標準化することが最善策です。