在宅歯科医療と介護保険の正しい算定と活用法

在宅歯科医療と介護保険の正しい算定と活用法

在宅歯科医療に介護保険を活用する際の算定ポイントや注意点を解説します。訪問先の種別・居宅療養管理指導の要件・医療保険との使い分けを正しく把握していますか?

在宅歯科医療と介護保険の基本と算定のポイント

あなたが「要介護認定さえあれば介護保険で居宅療養管理指導を算定できる」と思っているなら、訪問先の種別を見落として返戻が来るリスクがあります。


この記事の3つのポイント
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介護保険が適用される条件は訪問先による

介護保険証を持っていても、訪問先の施設種別によっては医療保険のみの請求になるケースがあります。種別の把握が算定の第一歩です。

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居宅療養管理指導は「治療行為」では算定できない

介護保険の居宅療養管理指導は、口腔管理・指導に対して算定するものです。虫歯治療や義歯調整などの治療行為は医療保険での算定が原則です。

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単一建物診療患者数の数え方が2種類ある

「同一建物診療患者」と「単一建物診療患者」では患者の数え方が異なります。混同すると算定誤りに直結します。


在宅歯科医療で介護保険が適用される基本条件と訪問先種別

訪問歯科診療に介護保険を使う場合、まず確認すべきは「利用者の認定状況」と「訪問先の種別」の2点です。 要支援または要介護認定を受けていることが大前提ですが、それだけでは不十分です。


訪問先が「居宅(自宅)」または「介護保険が適用される居住系施設」に該当しない場合、介護保険の居宅療養管理指導費は算定できません。 たとえば、介護老人保健施設(老健)や介護医療院に入所している患者には介護保険の居宅療養管理指導費は算定不可となり、医療保険のみの請求になります。 これが現場で最も起きやすい算定ミスの一つです。


関連)https://net-dental.co.jp/dn_dental_post/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E8%A8%AA%E5%95%8F%E8%A8%BA%E7%99%82%E7%AE%97%E5%AE%9A%E6%96%B9%E6%B3%95%E7%90%86%E8%A7%A3-%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E3%81%9D%E3%81%AE1%EF%BC%88%E5%8C%BB%E7%99%82%E4%BF%9D%E9%99%BA%E3%81%AE/


訪問先種別を正確に把握するには、初回訪問時に施設担当者に「施設の種別と介護保険の請求可否」を確認するのが原則です。 介護保険証・介護保険負担割合証の提示を受けるだけでは不十分な点に注意が必要です。


関連)https://www.dental-mie.or.jp/hatokutinokenkou/pdf/shikahoumon2019.3.pdf









訪問先の種別 医療保険 介護保険(居宅療養管理指導)
自宅・居住系施設(有料老人ホーム等) ✅ 算定可 ✅ 算定可
介護老人保健施設(老健) ✅ 算定可 ❌ 算定不可
介護医療院 ✅ 算定可 ❌ 算定不可
病院(入院中) ✅ 算定可 ❌ 算定不可


さらに、居宅療養管理指導費の算定にはケアマネジャーへの情報提供書(居宅療養管理指導記録)の作成と提供が義務付けられています。 この書類を作成せずに算定すると、後日指導・監査の対象になる可能性があります。書類作成が条件です。


関連)https://www.dental-mie.or.jp/hatokutinokenkou/pdf/shikahoumon2019.3.pdf


日本訪問歯科協会:訪問診療の患者数と報酬(同一建物・単一建物の例外算定を含む詳細解説)


在宅歯科医療における介護保険の居宅療養管理指導費の算定単位と回数

介護保険の居宅療養管理指導費は、医療保険の診療報酬点数とは別の「単位」で表されます。 歯科医師が算定できる「歯科医師居宅療養管理指導」は月2回まで算定可能です。


関連)https://net-dental.co.jp/dn_dental_post/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E8%A8%AA%E5%95%8F%E8%A8%BA%E7%99%82%E7%AE%97%E5%AE%9A%E6%96%B9%E6%B3%95%E7%90%86%E8%A7%A3-%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E3%81%9D%E3%81%AE1%EF%BC%88%E5%8C%BB%E7%99%82%E4%BF%9D%E9%99%BA%E3%81%AE/


具体的な算定単位は以下のとおりです。


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  • 単一建物診療患者が1人の場合:歯科医師居宅療養管理指導Ⅰ 516単位

  • 単一建物診療患者が2~9人の場合:歯科医師居宅療養管理指導Ⅱ 486単位

  • 上記以外(10人以上)の場合:歯科医師居宅療養管理指導Ⅲ 440単位


1単位は地域によって若干異なりますが、おおよそ10~10.9円です。 たとえば516単位であれば、約5,160円前後の算定となります。これはコンビニのランチ2〜3食分ほどの金額感です。


歯科衛生士が実施する「歯科衛生士等居宅療養管理指導」は、1人に対して20分以上の実地指導を行った場合に算定できます。 20分未満では算定できない点は要注意です。


関連)https://net-dental.co.jp/dn_dental_post/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E8%A8%AA%E5%95%8F%E8%A8%BA%E7%99%82%E7%AE%97%E5%AE%9A%E6%96%B9%E6%B3%95%E7%90%86%E8%A7%A3-%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E3%81%9D%E3%81%AE1%EF%BC%88%E5%8C%BB%E7%99%82%E4%BF%9D%E9%99%BA%E3%81%AE/



  • 単一建物1人:361単位

  • 単一建物2~9人:325単位

  • 上記以外:294単位


つまり「20分の指導時間の確保」が条件です。 開始・終了時刻を実施記録に記載することも義務付けられており、記録の漏れは返戻リスクに直結します。


関連)https://net-dental.co.jp/dn_dental_post/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E8%A8%AA%E5%95%8F%E8%A8%BA%E7%99%82%E7%AE%97%E5%AE%9A%E6%96%B9%E6%B3%95%E7%90%86%E8%A7%A3-%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E3%81%9D%E3%81%AE1%EF%BC%88%E5%8C%BB%E7%99%82%E4%BF%9D%E9%99%BA%E3%81%AE/


また、居宅療養管理指導費はケアプランの点数枠外(区分支給限度額の対象外)で算定できます。 これは利用者側にも大きなメリットです。ケアプランを組み直す必要がなく、他の介護サービスを削ることなく訪問歯科サービスを利用できるため、ケアマネジャーへの説明が通りやすくなります。


関連)https://sakura-houmonbu.jp/fee/insurance/


デンタルサポート:訪問歯科算定の基本(歯科訪問診療料・居宅療養管理指導費の単位・回数を表で確認)


在宅歯科医療の医療保険算定:歯科訪問診療料の点数と診療時間の要件

訪問歯科での治療行為は、医療保険の「歯科訪問診療料」で算定します。 点数は「同日に同一建物で何人診るか」と「1人あたりの診療時間」によって変わります。


関連)https://dentalsupport.biz/column/column-acting/gov04/








算定区分 診療人数 20分以上 20分未満
歯科訪問診療1 1名 1,100点 880点
歯科訪問診療2 2~9名 361点 253点
歯科訪問診療3 10名以上 185点 111点


1点は10円ですから、歯科訪問診療1(20分以上)は1回あたり11,000円の算定です。 患者1人の自宅を単独で訪問するケースが最も単価が高く、逆に同一施設に10名以上訪問する場合は大幅に低下します。これは大きな差ですね。


関連)https://dentalsupport.biz/column/column-acting/gov04/


施設基準の届出も重要な前提です。 訪問診療の実績がゼロの歯科医院が歯科訪問診療料1〜5を算定する場合は、「歯科訪問診療料の注15」の届出が必須です。 無届けのまま算定すると不正請求と判断されるリスクがあります。


関連)https://www.shien.co.jp/media/sample/s3/BK08579.pdf


また、診療録とレセプトには「診療の開始時刻と終了時刻」を必ず記載しなければなりません。 これを怠ると20分以上か20分未満かの区別がつかないため、指導の際に問題視されやすいです。時刻の記載は必須です。


関連)https://dentalsupport.biz/column/column-acting/gov04/


全国保険医団体連合会:歯科訪問診療の手引き(算定要件・施設基準・16km超の給付除外ルールを含む)


在宅歯科医療で見落とされがちな「単一建物診療患者」の数え方の落とし穴

訪問歯科算定で最もミスが起きやすいのが「患者の数え方」の使い分けです。 算定項目によって「同一建物診療患者」と「単一建物診療患者」の2種類があり、数え方のロジックが異なります。


関連)https://net-dental.co.jp/dn_dental_post/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E8%A8%AA%E5%95%8F%E8%A8%BA%E7%99%82%E7%AE%97%E5%AE%9A%E6%96%B9%E6%B3%95%E7%90%86%E8%A7%A3-%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E3%81%9D%E3%81%AE1%EF%BC%88%E5%8C%BB%E7%99%82%E4%BF%9D%E9%99%BA%E3%81%AE/


「同一建物診療患者」は同じ日・同じ建物で診た患者数を使います。 これは歯科訪問診療料の算定に使います。一方、「単一建物診療患者」は同じ月・同じ建物に住む実患者数で算定します。これは居宅療養管理指導費や訪問歯科衛生指導料に使います。


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具体例で見るとわかりやすいです。



  • 4月1日:患者A・B・C 3名 → 歯科訪問診療2(当日3名)

  • 4月8日:患者A 1名 → 歯科訪問診療1(当日1名)

  • 4月の実患者:A・B・C・D・E・Fの6名 → 居宅療養管理指導Ⅱ(月合計6名)


同日と同月で患者区分が変わる、ということですね。 これを混同すると、診療2を算定すべき日に診療1を算定してしまう、または居宅療養管理指導の区分を誤るといった二重ミスが生じます。


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算定ミスを防ぐには、診療日ごとの訪問先患者数を記録するシートと、月単位の実患者数を集計する台帳を別々に管理するのが実務上の対策になります。 レセプトコンピュータの入力欄を確認するだけでは対処しきれないケースもあります。日々の記録管理が鍵です。


在宅歯科医療における介護保険と医療保険の「同時算定」ができる組み合わせと注意点

訪問歯科診療では、同一日に医療保険と介護保険の両方を算定できるケースがあります。 これは在宅歯科医療特有のルールで、多くの歯科医師が「どちらか一方しか使えない」と誤解しているポイントです。


関連)https://www.youtube.com/watch?v=NCzQM9umC2g


治療行為(虫歯処置・義歯調整など)は医療保険で、口腔管理・指導(ブラッシング指導口腔機能訓練など)は介護保険の居宅療養管理指導で算定します。 両者は目的が異なるため、同日の同一患者に対して両方を算定することが認められています。両保険の併用が原則です。


関連)https://hattorishika.jp/column/238/


ただし注意点があります。 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料(訪問口腔リハ)は、医療保険の算定で月4回まで可能ですが、歯数によって点数が変わります。


関連)https://www.kokuhoken.or.jp/publication/upload_docs/%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%94%E5%B9%B4%EF%BC%94%E6%9C%88%E6%94%B9%E5%AE%9A%5B7681%5D.pdf



  • 0〜9歯:400点(旧350点)

  • 10〜19歯:500点(旧450点)

  • 20歯以上:600点(旧550点)


在宅療養支援歯科診療所1(歯援診1)の認定を受けていれば、加算として145点(旧125点)を上乗せできます。 歯援診1の届出は要件が9項目と多いですが、算定単価の底上げに直結するため、在宅歯科医療を軸にする医院では必須の施設基準といえます。


関連)https://www.kokuhoken.or.jp/publication/upload_docs/%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%94%E5%B9%B4%EF%BC%94%E6%9C%88%E6%94%B9%E5%AE%9A%5B7681%5D.pdf


介護保険の被保険者であっても、通院困難の理由が「身体的・精神的障がい」などの場合は介護保険の認定有無に関わらず訪問歯科の対象となります。 介護保険がなくても訪問診療は可能です。これを知らずに「介護保険がないから対象外」と判断してしまうと、潜在的な患者を取りこぼすことになります。


関連)https://www.onodera-shika.jp/news/2024/02/25/%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E4%BF%9D%E9%99%BA%E3%82%92%E4%BD%BF%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%A6%E3%82%82%E8%A8%AA%E5%95%8F%E6%AD%AF%E7%A7%91%E8%A8%BA%E7%99%82%E3%82%92%E5%8F%97%E3%81%91%E3%82%89%E3%82%8C/


さくら会の訪問歯科:介護保険の適用条件とケアプラン枠外算定の仕組みをわかりやすく解説